アジアの美術

 一昨日かもっと前くらいに福岡アジア美術館に行ってきました。大学の講義の関係で、中国の近代美術がテーマだったんでそれで。そこで『チャイナ・ドリーム展』ってのを来月半ば頃までやってます。

「チャイナ・ドリーム 描かれた憧れの中国──広東・上海」
 
■期間:2004/09/04〜2004/10/17
■会場:企画ギャラリー(7階)


*1. 講義について

 西洋中心の近代的価値観の見直しといった、今ではありふれていて、それでいて重要なテーマが今回の講義の主な目的だったわけです。当時、主題として頻繁に取り上げられた中国像が意味していたものを、西洋人の支配者的なまなざしから読み取ろうって感じで。そのことはよくよく分かるんですが、ここはあえて僕も、そのまなざしを暴こうとする担当講師のまなざしを批判的なまなざしで見てました。あいかわらずひねくれてます。

 展示作品のセレクトや、展示順、その他の演出にも、展示会担当者(=今回の講師)の意図がやはりあるはずです。だから、ひとつのある作品を先入観なしに見ることって難しいもんだなあと、つくづく思ってしまったんですね。講義後のレポートも、講師の考え方に影響されすぎたものが、大半を占めてしまうんじゃないのかなあって。悪いことだとは思いませんが、つまんないかも…と。

 でも“純粋な作品鑑賞”っていうのも、理想論みたいな話であって、気付かない内に、自分勝手なコンテクストから、意味を作り出しちゃうもんなんでしょうね。そもそも“作品の意味”というものからして怪しいもんですが。


*2. 所蔵品展

 詳しい内容や突っ込んだ話は課題のレポートにでも書くとして、チャイナドリーム展よりも、我を忘れて作品の世界にドップリ漬かっちゃったのが、アジ美の所蔵品展。

 入って一発目の作品は、笑っちゃうくらいインパクトの強い作品なんですが、それを初めとして、ものすごく挑戦的な作品が多かった印象があります。「皮肉!」「抵抗!」「渇望!」って言葉がすぐ浮かんでくるような。個人的に前半の作品群が特に好きでした。

 名前だけを挙げてもしょうがないんですが、蓮の葉をモチーフとしたサイケデリックな色づかいの作品『はすの葉の中の生の反映』のプラトゥアン・エームチャルーンや、シニカル・リアリズムの旗手と言われるファン・リジュン(方力鈞)。あと、なによりチャン・ルーンが、僕には印象的でした。一応、アジ美HPの[コレクション]のメニュー項目から、写真がちょこちょこ見れます。


*3. Tran Luong

 チャン・ルーンの絵はすごく気に入っちゃって、時間を忘れて、えらく長い間魅入ってましたね。『Under the Water』─ベトナムの水生生物を題材とした作品。白い絵の具を削って書かれたカエルとか、真っ黒なウナギとか水草、小魚の群れ…らしきもの(ハッキリとは言えません)。

Tran Luong's formative years, during which the country was at war, were spent in the countryside. Like many artists of his generation, he learned the values of traditional Vietnamese life from the countryside...

 よく見ると、現地の川か沼で取ったものか知りませんが、泥の付いた白い小石がいくつか絵の中に埋め込まれています。僕はベトナムには一度も行ったことはないのに、なんだかそれが、ベトナムの匂いや、水のせせらぎ、田園風景を生(ナマ)のまま、泥いっぱいに封じ込めて、それからその中にさらに──白い小石が、この絵(ベトナムの姿)を引きずって、ここ日本まで、川の流れに乗って運んできてくれた時についた──世界各地の泥まで一緒に含有させてしまったような …そんな不思議な感覚が、郷愁感と共に湧き起こりました。

て、よく分かんない文章になっちゃいましたね。

 後で調べてみたら、チャン・ルーンは、ベトナム現代アート界の重鎮と言われている人物だそうで。最近はインスタレーション作品を主に活動しているようです。

それにしても楽しかった。